荒野を歩け

買ってよかったものや食べてよかったものを書いていくだけのブログです。うそです。雑記帳です。

パンと蜜をめしあがれ(窯焼きパスコ・国産小麦のバゲット)

ごぶさたしております。

 以前、好きなトーストアレンジについてのエントリを投稿したことがありました。

solamimix.hatenadiary.jp

 その後もおのれの食欲の趣くままに食べ食べ妖怪をやっていた結果、体重が人生最高をマークしたのが丁度一年ほど前。身体は正直ですね(因果応報)。

以降、一念発起しわがままボディ(肥)からわがままボディ(締)へクラスチェンジすべく本気ダイエットに着手してからというもの、パンはご褒美として楽しむものという位置づけに変わりました。

今でもわがパンへの愛に一点の曇りなしというのは紛れもない事実ですが、バッターボックスに入る回数が減ったぶん、好みのパンと出会うために私が上げるべきは打率!ということで、打席に立つ際の選球眼と精度を高めることに勤しんでおります。

 

そんな私が最近出会って感動したパンがこちら!

窯焼きパスコ・国産小麦のバゲットです。

www.pasconet.co.jp

発売されたのは2017年頃とのことで、パン好きの諸兄姉はすでにご存じのシリーズかと思います。実際に、取扱いのあるスーパーも増えてきました。

時折お店で見かけるたびに気になっていましたが、個人的にパン食の頻度が落ちたことも手伝って、試すのが延び延びになっていたのでした。

結論として、市販のバゲットの最高峰では?と思うほどのお気に入りになりました。

これ食べたらもう某パリ男には戻れない…!いやアレはアレで私のフランスパンの原風景ではあるんだけど… 刷り込まれた懐古厨の心中イズコンプリケイテッド。

 

そんな食い意地おばけのハートをがっちりつかんだポイントは2つ。

  • しっかりと感じられる小麦本来の風味
  • ベーカリー顔負けの外バリ中もち食感

開封してすぐに、酸味を含んだ小麦の香ばしい香りが立ち上ります。私はこの匂いが大好きです。全粒粉やライ麦などを扱うハード系のパン屋さんに行くと脊髄反射でスーハーしちゃう。ルームフレグランスに欲しいレベル(オタク特有の誇張表現)

また、表面にまとった仕上げのお粉がしっかりと残っているのも驚きました。市販のパンでこの粉を感じたことはなかったな… 街のベーカリーと勝負できるバゲットを自宅でも、というメーカーの本気が伝わってくるようです。

トースターでリベイクする際は、①表面を軽く湿らせること②2分焼いたら余熱のままさらに2分待つ(焼き過ぎない)ことが推奨されています。

マニュアル型人間こと私もその手順を踏襲し温め直してみたところ、これがま~~~おいしい。すっかり度肝を抜かれました。

水分を補給してあげたことで、外側はバリッと歯切れよく、中の白い部分はしっとりもっちもちの仕上がり。シンプルながら、小麦そのものの風味が引き立っていて物足りなさがない。アツアツのところにバターを含ませて味わうのが「「正解」」という気すらしました。

 

これがスーパーの片隅で2割引きになっていたパンなどと誰が信じようか。これは修業を積んだパン職人が独立して開いたベーカリー ――こじんまりとした店構えながらお客さんの絶えない地元の人気店――で丁寧に作られたバゲットそのもの…!

もしかして私がまた食べたいと熱望しているバインミーバゲットってこれだった??と錯覚するほどの感動をおぼえました。

元より食パンは超熟派のわたくし、市販でこのクオリティを実現するパスコの仕事ぶりにあらためて舌を巻きました。これだから敷島製パン推せる…!

切り方によっても食感が変わるので、お好みの形や厚さにカットして楽しめるのも最高です。

私がこれまでに試したのは以下のとおり。

【3センチ幅の斜めスライス】

  • バタートースト
  • トースト→オリーブオイル・お酢・塩で和えたトマトをのせてタルティー
  • フレンチトースト ※土井先生流が時短&失敗なしです

    www.osarai-kitchen.com

【1/3にカット後スライス】

  • 明太子・マヨネーズ・オリーブオイルを混ぜ塗り焼きで明太フランス
  • トースト→ゆで卵・明太マヨ・大葉を挟んだバゲットサンド

個人的なオススメはバゲットサンドです。このパンの良さである外バリ中モチの食感が存分に発揮されてたいへん好みでした。なお、お水はポイントなので省かないほうが良さそうです。わが家には霧吹きという気の利いたものがないため、湿らせた手のひらでバゲットの表面をなで回して事なきを得ました。この際手段は選ばない。でもこのひと手間でバリッとむっちり感が上がります!そのうち紅白なますとサラダチキンを用意して自家製バインミーもやりたいな。

あとはフレトーも良かったです。

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食パンとは違って柔らかい中にほどよい噛みごたえが残るのが最高。そしてバターと小麦の香りが素晴らしいアクセントになってフォークを運ぶ手の疾きこと風の如し。私は水切りヨーグルトとラスベリーのジャムを添えて食べました。甘味×酸味×さっぱり=向かうところ敵なしの方程式が完成です。うますぎて作った翌週にリピートしたもんね。おいしいものはたっぷり好きなだけが贅沢だと思っているので、飽きるまで定期的にやっちゃう(そして飽きる)(熱しやすく冷めやすいマンの典型)

 

 

まだまた不要不急の外出が憚られる毎日が続きます。ワクチン接種が少しずつ進んできたとはいえ、終わりの見えないトンネルに気が滅入ることもあります。

このコロナ禍で行きたかったお店が消えてしまうことに大きなショックと後悔を抱えたこともまた少なからず… 「推しは推せるときに推せ」はけだし名言ですね。

ただ、自由にお出かけができない今、市販のパンにもベーカリーに引けをとらない本格的な商品があるんだ!という発見は私にとって大きな活力になりました。

行きたいところへ行けず、会いたい人に会えず、心のバッテリーが切れそうになった時でも、好きなものを味わっている瞬間だけはつらさを忘れて元気になれる。おいしいは原始よりの魔法、というのは私のひそかな持論ですが、その気持ちが一層強くなった気がします。

こんなご時世、手軽に楽しめる市販のパンを楽しみつつ、日々頑張っていらっしゃる街のパン屋さんのことも両方応援していけたらなと思っています。

好きな人と好きな場所で好きなものをたくさん分け合える日が一日も早く訪れますように!

凪(yra・ピアス "calm")

私はジュエリーが好きです。とりわけ好きなのが、指輪とピアス。

飾りたてるためではなく、見守るようにそっと寄り添ってくれるデザインに惹かれます。以前は石が留まっているものが好みでしたが、ここ数年はファッションを選ばずに使える地金の気分が続いています。

特にピアスに関しては、金属アレルギー(なぜか耳のみ)を発症するようになってからというもの、気に入ったものを長く大切に使う方向へシフトしました。

 

個人的にお気に入りのつくり手として、yra(ヤラ)という作家さんがいます。

作品たちはどれも繊細で、静かに揺れる水面のごとく静謐な雰囲気をたたえています。誠実な手仕事からお人柄もまた伝わってきて、眺めているとゆっくりと丁寧な呼吸をしたくなる自分に気づきます。

 

2020年の暮れに阿佐ヶ谷のCONTEXT-S TOKYOで開かれた個展「遠くに見えるもの」でオーダーしたピアスが、先日手元へ届きました。

yraさんのことはインスタグラムで知り、初めて関東で個展をされた2019年にもピアスをお譲りいただきました。今回はふたつめです。

 

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細い糸で丁寧にかけられたリボン。ほどくのがもったいない。

箱の表面は和紙のようなかすかな凹凸のある紙が用いられています。均一でない、ぽこぽことした手触りからはどこか温かみを感じます。もしかするとご自身でひとつひとつ貼っておられるのかも…?と思ったり。

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素敵なカードも同封されていました。裏には、細やかな字で手書きのメッセージが数行添えられています。ひとつひとつの荷物にこうした心配りをされているのだなと思うと、敬意と感謝から自然と頭が下がります。
以前、私が小売業をしている頃に、研修の一環として数日間ギフトコーナーでの接客に携わったことがありました。その時に上司から教わったことで今も心に残っている言葉があります。

「ラッピングは商品だけでなく贈る人の真心を包むんだよ」

yraさんからの小さな贈り物を見て、それを思い出しました。

 

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そっと蓋を開けると、ふわふわの羊毛にくるまれてふたつの光が眠っていました。

双子のよう。でもそれぞれ微妙に形が違います。和菓子のういろうで出来たイチョウのような、丸を4つ折りにしたデザインです。金属の光沢感と直線があいまったクールな印象の中にも、ところどころ波打つ曲線が柔らかさを感じさせます。素材の持つひんやりとしたイメージと、人肌の温度を思わせる手仕事の温かみ。yraさんの作品のこうしたバランスが、私の心をつかんで離さない所以のように思います。

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恥ずかしながら着用写真も。

とても軽く、つけていてもストレスがありません。あえて残されたたわみによって、光を反射したり影を作ったりと静かに表情を変え、横顔に上品なきらめきを添えてくれます。

 

yraさんの作品を表すにあたって、自分の中で最もしっくりくる表現はなんだろうと考えていました。手元のピアスを眺めていて思ったのは、「ずっとそこにあったみたい」という言葉でした。ずっとそこにあったみたいに、身につけた人に寄り添い、なじんで光を返してくれる。凡庸な表現ですが、耳に留めるたびにそう思います。

そして、yraさんの作品を前にして感じるのは、祈りです。手がけるすべてに向き合い、ひとつひとつ丁寧に心を込められているのがわかります。

「作品を手にした人が喜んでくれますように」「作品が、身につける人のそばでそっと輝いて小さな灯りとなりますように」。大変勝手ながら、そんな思いを受け取った気がしました。

手仕事を通して伝わってくる真摯さや誠実さから、yraさんを思い出す時、私の頭の中ではあるメロディが流れます。

阿部芙蓉美さんの「凪」という曲です。

open.spotify.com

彼女の少し掠れたウィスパーボイスと楽曲が紡ぎ出す雰囲気もさることながら、「凪ぐ 世界で/凪ぐ 世界で/みんなのすべてが うまくいくようにと祈る」 という歌詞が、私がyraさんから受け取る美しさそのもののように思えたからです。

この曲を知ったのは、先日の個展へお邪魔するよりもっと前のことでしたが、奇しくも今回私がオーダーしたピアスの名前は「calm」というのだそうです。

(あとから気づいて驚きました。あるいは、私の脳が無意識のうちに関連性を見出してリンクさせたのかもしれません)

 

次にお会いすることができたら、その時は指輪を選ぼうと思っています。

inoriという作品です。私がyraさんを知るきっかけとなった指輪でもあります。(キャプションも素晴らしいので、ぜひご覧ください!)

yra.blog.jp

これまではどの指にいてもらうのがいいか迷っていて二の足を踏んでいましたが、一生定位置の決まった指輪ができたことで、つけたい場所が定まりました。

今はcalmをつけながら、凪を聴く日々です。とても嬉しい。

制約の多い現在の世界において、鏡の中の自分がちょっとくたびれた顔をしていても、耳元で光るかけらを見ると、背筋を伸ばしてまた少し頑張れそうな気がしてきます。

もうひとつのpukaも含めて、私の小さなお守りです。

 

TEXAS

 ご報告と所感の覚書きを兼ねたエントリを投稿してから早2ヵ月。(もはや毎度おなじみの冒頭)(引き出しが乏しすぎる問題)

このたび、2021年1月佳日に無事入籍しました。

solamimix.hatenadiary.jp

 

共暮らしはあいかわらずだし実感はあまりない、と一度はタイプしたものの、キーボードを叩くたび視界の左端でチカチカと反射される光が目に留まり、バックスペースを押しました。

晴れて、薬指に指輪を通す日が迎えられたことを心から嬉しく思います。

オーダーしていた指輪が手元に届いてからというもの、この時が来るのを首を長くして待ち望んでいました。当初の納入予定日は年明け前後だったのが、フタを開けてみれば大幅に前倒しての完成。欣喜雀躍する反面、すぐにでもつけ始めたい衝動と長期戦での戦いを余儀なくされました。(勢い余ってツイッターで実装タイミングのアンケートもとった人)

贅沢な悩みですね。

入籍日に解禁して以来、誇張なしに毎日100回くらいは自分の手を眺めています。夫の指の第二関節から根元のあいだを泳ぐさまを見ても、気がつけばニヤニヤしている自分がいます。これが今のところ、一番の実感かもしれません。

 

名字については、現在も鋭意変更手続き中ということもあり、自分のものとしてしっくりくるのはまだ先のようです。

愛憎を織り交ぜつつ長らく慣れ親しんできた名前をある日を境に名乗らなくなる、というのは実際に直面してみると、当然ではありますが不自然なことのようにも感じます。愛着があったかと聞かれると、一度首をかしげてから頷くのが個人的には妥当なラインであったわが旧姓。しかし思えば、名字は自分がこの世に生まれた時からともにあり、ヘタすると両親からの最初の贈り物よりも先に与えられた呼び名なんですよね。

自分を定義してきた名前がある瞬間から過去のものとなり、その日から(おそらく)二度と名乗ることはないのだと思うと、これまでの日々が切り離されるようで、少々鼻の奥がつんとしました。

人生は地続きであり、結婚によって自分の中のなにかが変えられることはないのだけれど、それまでの世界と同じように見えて確実にどこかが違っている。白線を一本引かれたような気がしました。(だからといってどうということはないのですが…)

雑感として、名前が変わるって、喜びや煩わしさだけでなく感傷も生じうるのだなとひとつ学びになりました。

 

また、入籍に伴って関係各所へご報告をしてみて感じたのは、ハッピーな気分になってくれる方が意外に多いということ。

ごく私的な事柄であり、語弊を恐れず言うのであれば、当事者たちを除いては無関係の出来事にもかかわらず、お伝えした相手に軒並み喜んでもらえることに驚きました。

寿ぎだけでもありがたいところを「明るいニュースで温かい気持ちになりました」と笑顔になってもらえて、私としては本当に幸せなかぎりです。嬉しい誤算でした。

 

入籍をして夫婦になった以外、生活における変化は今のところありません。これまでと変わらず、仕事へ行き、食卓を囲み、夜は眠り、淡々と日常を過ごしています。

平凡な日々の美しさを知った今は、この暮らしがご褒美のように感じられる時があります。おいしいものを食べても元気が出ない日、のんびりと笑うこの人が隣にいればまぁいっかと思えることもあります。
エンドロールのその先の物語に憧れてきたけれど、ここに立ってみて気づいたのは、エンドロールのその先は新しい日々の幕開けなのだということ。

ひとつの家族として、私たちはまだスタートを切ったばかりです。

お互いに感謝といたわりを忘れずに時間を重ね、いつか振り返った時に「人生、悪くなかったね」と笑いあえるものになればいいなと思います。

美しい日々(2020.11.17 日記)

 

新しいセーターを下ろした。新しいとは言っても実際には古着だ。セカスト愛してる。菅田くんがCMをやってたとこのハイネックで、白寄りのベージュにカフェオレ色のネップが入っている。化繊に毛が6%の混紡で、もちもちした肌触りなのが気持ちいい。

今年は11月にしもやけをこさえるという不名誉なシーズン最短記録を更新してしまったため、用心してヒートテックを重ねていったら、電車で暖房に吹かれているうちに汗ばんだ。体温調節の難しい時季ですね。

 

帰宅してお風呂を洗っている間に恋人からラインが届いていた。

トラブル対応で帰りが遅くなるとのこと。いつもなら晩ごはんは一緒に食べるが、今回は退勤時間が読めないようだ。職場を出る際に連絡をくれるよう返信を入れて、私は先に済ませることにした。

週末に外食が続いたので軽めに湯豆腐とキムチ。かわりにデザートとして焼き芋を食べた。例の紅天使ちゃん!母の差し入れである。スーパーで焼き上げられたもので、小ぶりだがねっとりと甘い。しっぽまでしっとりだ。これこれ~!期待した味にまた会えてうれしい。やはり推せる。

 

お芋を味わいながら松丸くん考案のクイズを眺めていると「これから帰ります」の一報。支度にとりかかる。今夜は冷凍餃子と味噌ラーメン。いずれもわが家が足繁く通う業務スーパー・通称業スー商品である。ゆでるだけ、焼くだけで間違いないおいしさなのだから本当にありがたい。

私にとって業スーは自転車で行けるテーマパークだ。しかも入場料無料!できることなら日参したい。私の推しは1Lのチョコババロアとひとくち大福、カット白ねぎです。最近はお肉も扱うようになったのでまた最強に一歩近づいてしまった。閉店前に行くと国産豚肉が2割引きで買えたりする。はいはい冷凍冷凍!(ガサっとカゴに入れる絵文字)

 

シュワシュワと泡を立てていた餃子のフライパンの音がパチパチと軽いものになってきた。焼き色もいい感じ。鍋の中のお湯もぐつぐつと揺れている。絶好のタイミングで恋人が玄関のドアを開けた。おなかすいた?と聞くと食い気味のうんが返ってきたので、麺は2玉入れて、作っておいたもやし炒めをたっぷりのせてあげた。

湯気で眼鏡を曇らせながら、恋人の口に運ばれていくラーメン。なにせ一口がでかい。あっというまに器の水嵩が減っていく。少し残っていたもやし炒めもおかわりで完売と相成った。たくさん食べる人は見ていて気持ちがいい。食に興味がない人と私が一緒に暮らすのは難しかろうなぁと思う。そんな人とデートしたこともありました。

 

今夜は思いがけずよい知らせがあった。先日オーダーした結婚指輪が完成したという。予定納期は入籍日ギリギリのような感触だったが、実際には2ヵ月以上工期を早めての仕上がりだった。ハ~~びっくり!

入籍日からつけ始めようと考えていたが、実物を手にしたら欣喜雀躍してそんな理性はこっぱみじんに吹き飛びそうだ。でも早く見たい。

新型コロナ感染の第3波のさなかにつき、受取りは配送でお願いすることにした。指を通す日が待ち遠しい。形ばかりでいいから、指輪の交換ごっこもしてみたい。子どもみたいですね。

 

湯冷めしないうちに羽毛布団へ潜りこむ。どうも今夜は暖かい。別れを惜しんでいるのか後ろ髪を引かれた秋が2、3歩足を戻したようだ。

週末には祝日が待っている。天気がよければ散歩に行きたい。

最強のこれから

ひとつ屋根の下で暮らすようになってから4ヶ月余りが過ぎた。

あれだけ容赦なく首筋へ照りつけていた陽射しもいまは遠ざかり、秋の第4コーナーを曲がって直線をひた走るところである。

 

このたび、来年の1月に恋人と入籍することとなった。

すでに共暮らしを始めているから、変わるのは自分の名字くらいだ。「くらいだ」とさも軽げに言ったが、氏名変更にかかる手続きが多岐にわたることはインターネットの集合知によりご教示いただいた。

婚姻届が受理されればミッション完了だと呑気な恋人に「戸籍謄本を取り寄せられたし」と先手でジャブを打ちながら、当日も私の事務手続きの足としてご活躍いただく予定である。

 

でも、新しい名字になるのが嫌かと問われればそうでもない。むしろやぶさかでもないほうである。

私は昔から、自分の名字が変わることに一定の憧れがあった。幼い頃は結婚の真義については棚上げにして、結婚=新しい名字を名乗ることだと思っていた。

私の生まれついての名字はやや個性的な部類に入る。字面を見れば普通に読めるのだが、口頭だと聞き返されることが多い。使っている漢字にインパクトがあるため、家族のつけられるあだ名はみな同じだ。

また、常用することは少ない漢字でもある。「九川→丸川」のような、結果として別の宛名になってしまった年賀状が届くのが毎年の風物詩だ。(最近はプリント技術の裾野が広がり手書きのはがきが減った。それはそれで寂しい)

そんなわけで「間違われない」という現実的な面においても、今回新たな名前を得ることに関して、個人的には満を持してといった心持ちである。

好きな人と同じ名字を名乗れることも素直にうれしい。一人と一人で家族になるのだなと思う。これから先、入籍後に自分の名字をみずから選べる社会がくることを願う一方で、仮に別姓が認められていたとしても私は多分同じ選択をしただろう。

 

この社会には(いまのところ)、女性に生まれたことで掛けられるいくつかの呪いがあると思う。「年頃になれば男性と結婚するのが当然」であり「未婚である以上恋愛市場に上っており対象とみなしてよい」という観念も残念なことにそのひとつだ。

それを信じる必要も守る必要もないと頭では理解しながら、私はその呪いを解ききることはかなわなかった。なぜなら私は結婚を望んでいたからだ。等身大の私を受け入れてくれ、自分以上にお互いのことを大切に思いあえる家族以外の誰かを見つけたかった。

 

仕事からの帰り道、電車に揺られながら帰宅後に行う家事のことを考える。

まだ暖かいドラムの中で待つ洗濯物を畳み、乾いた食器は水切りカゴから食器棚へと仕舞う。今夜は豚肉と大根の炒め煮。お米を研いで炊飯器にセットしたら、解凍しておいた豚こまに塩こしょうと片栗粉をもみこんでおく。なじむまでの間に大根をいちょう切りにし、ついでに湯豆腐用のえのきの石づきもとっておこう。……順番を組み立てながらふと気づく。

当然のように、私は恋人が玄関を開けてただいまと帰ってくることを信じているのだ。彼の居場所はここなのだと安心している。それは逆もまた然りで、私の帰る場所は彼と暮らすこの家なのだ。そのことに時々涙が出そうになる。

 

私は自己承認が下手くそ、そのくせ自意識過剰なたちで、他者の評価を内在化したまま生きてきた。そのせいでずっと自分に自信が持てなかった。自信がないから一人で立ち続けることに難儀したし、いつまでも他人の視線が気になった。自分がどう見られているか、惨めに見えてはいないか常に気を張り巡らせて消耗していたように思う。

でも、私を見つけてくれた人がいたことによって、私は呪いを解くことができた。婚姻という名の箱を得たからというよりは、自分達の力で暮らす、その営みによるところが大きい。匿名他者からの評価が不要になったいま、誰かの「その他大勢」でもまったく構わないと思えるようになった。

恋人と暮らすようになって、張っていた気が自然と緩んでいるのがわかる。以前なら突風にかき乱された前髪を一秒と待たず直さねば落ちつかなかったが、いまは自転車の向かい風でおでこが全開になってもへっちゃらだ。指毛の処理を忘れてもまぁいいかと思える。生きてるんだし。

「恋愛市場」から下りたことで、いまだかつてないほどQOLが爆上がりした。職務上浮かべた笑顔を、個人への好意と曲解されることを恐れ予防線を張る必要もない。

驚愕の生きやすさだ。ようやく性別というフィルターを取り除き、「人間」としての土俵に立った気さえする。もっと早くこの呪いが解ければよかった。と同時に、この世からこの手合いの悪弊を一日も早く断ち切れるよう価値観のアップデートを続けていく気持ちを新たにした。

 

ずいぶんと長いエントリとなってしまった。主語が自分の話ばかりで恐縮である。

これは現在の私から、過去と未来の自分へおくる瓶詰めの手紙だ。あるいは篝火。いつかの私が出会って、わずかでも呼吸をしやすくする手助けになればいいと思う。

しかし、恋人を「私を呪いから救いたもうたメシア!」的に礼賛するような書きぶりになってしまうのは大変むずがゆい。二人暮らしにおける心境の実態はいささか異なる。

友人の言葉を借りるなら、「ウキウキのちイライラところにより○すぞ」がドンズバで完全一致である。(余談ながらこのセンテンスを目にした際、あまりに言い得て妙で電車内で吹き出してしまった。こんなパワーワードをさらりと繰り出せるウィットをぜひ身につけたい)

待ち合わせをしなくても毎日会えることはうれしいが、掃除に食器洗いにと動き回る私に目もくれず、スマホで延々とYouTubeを見ながらごろごろされると、泡だらけのフライパンを後頭部めがけて振りかぶったろかという気持ちが時折芽生えないでもない。

 

ただ、そんな私に安寧がもたらされたのは、恋人の存在あってこそというのもまた事実だ。

どんな時でも穏やかなのんびり屋で、ゲームを愛し、よく食べよく眠る人である。

 人間をダメにするソファに寝転んでドラクエをプレイする横顔へ向け、心の中でつぶやく。

自由にしてくれてありがとう。

二人旅がはじまるね。「ヒビやシミやズレや穴も 君と見るとわりとたのしいや」。

これからの道行きもまた、素晴らしいものとなることを願ってやみません。

ゆっくりぼちぼち、幸せな平凡を楽しんでいきましょう。

こんな夜明けにバナナかよ(ダイソー・推しキッチングッズ)

7月をまるまる梅雨に占拠され、ようやく明けたと思えば車のボンネットで卵が焼けそうな陽射しが容赦なく降り注ぐ盆の入りのきょう、みなさまいかがお過ごしですか。

私は暦どおりの平日として絶賛勤務中です。ささやかな抵抗としてTeva風のサンダルで出勤しました。靴下は履いてるから許されたい。

 

転居からひと月半が経ち、わが家のキッチンもぼちぼち整ってきました。

これほど100均に通った日々も人生になかったような気がします。なかでもMVPはダイソーにさしあげたい。

 

ダイソーの耐熱ガラス容器は完全に買ってよかったやつです(早くも100円を逸脱)。

800ml(300円)と1100ml(400円)を持ってますが、色移り・匂い移りしやすい料理をがさっと入れておくのに重宝しています。白状すると主にカレーです。

ガラスなのでそこそこ重いですが、ジップロックコンテナでしぶとい四つ角のヌルヌルと永遠に戯れることを思えば全然許せるレベル。

とはいえ、フタはプラスチック製なので脂っこいものをしまう時はラップをかませています。今のところ密封性や開閉に支障はなさそう。

 

耐熱ガラスといえば、同じくダイソーでマグカップも購入しました。これも200円。

陶器のマグカップと比べてなにがいいって、こちらは逆にその軽さです。

薄くて軽いことに加え、洗いやすく乾きやすい。おまけに茶渋もつかない!

持ち手は熱くならないのかな?と最初は心配しましたがまったくの杞憂でした。

見た目もシンプルでオシャレを気取れ、個人的には満点です。

もともと無印のものを買うつもりだったのが、100均で掘り出し物に会えてほくほくです。ヒマさえあれば足繁く通ったかいがあったってもんだ。うんうん。

 

ダイソーでもうひとつ買ってよかったものを挙げるとすれば、それはジェネリックぶんぶんチョッパーです。300円。

本家ぶんぶんチョッパーについては、お噂はかねがね状態で前から興味はあったものの、野菜を刻む以外の使い道が浮かばず手を出せずにいました。

みじん切りは正直めんどくさいけど、新たに道具出して洗い物増やすほうが手間では?と脳裏でズボラ大魔神が腕組みしていたのもたしか。

しかし!ある日お店で見かけ、300円なら失敗してもさほどの痛手でもあるまい…最悪玉ねぎを無限にみじん切りすればいいし(浪費家の発想)とタカをくくって購入してみたところ、こいつが私の先入観を払拭するなんとも良なアイテムでした。

私の主な使い道は、冷凍バナナ+ヨーグルトでお手軽スムージーを作ること。

むしろほぼスムージー作ってる。それかバナナシェイク

レシピはたいへんシンプルで、お好みの冷凍バナナとヨーグルトを容器にぶちこみ思いのままにぶんぶんのヒモを引く。たったそれだけ。

ぶん回せばぶん回すほどバナナとヨーグルトが渾然一体化し、なめらかなスムージーができます。逆にバナナの食感を残したい場合には、ヒモの手応えが軽くなったところで止めればねっとりとした舌触りが魅力的なスムージーの完成です。

そのままでも充分おいしいですが、私はそこにきなこを足してます。これだけバナナを連呼しておいてなんですが、実はバナナは苦手な部類です。味は好きなのだけれど、熟したときに強く発される特有の芳香にすこしウッとなるというか…

しかし、きなこの香ばしさが入ることで熟れた香りが和らぎ、結果ただただ甘酸っぱくておいしいバナナヨーグルトスムージーになります。

ヨーグルトを牛乳or豆乳にすればバナナシェイクに早変わり。私はもっともおいしいバナナの味わいかたはチョコレートとのマッチアップだと信じてやまないチョコバナナ信者のため、手近にあったミロを大さじ1加えてぶんぶんしました。

ひとくち飲んで、予想を上回る完成度にヒザから崩れ落ちそうになりました。うますぎる…!そりゃバナナミルク専門店もできるわ。

冷凍バナナを使ってるぶんシャリシャリ感があってもはやデザートの域。自宅でこれができるなど、ぶんぶんチョッパー、おまえはなんと罪作りな…!

おいしさのあまり致死量のチョコバナナシェイクを摂取しないようご留意ください。

 

バナナの話に終始しましたが、玉ねぎやにんじんもぶんぶんしましたよ。

包丁で刻むより早いし細かくできてらくちんです。あの子達みじん切りしてるうちに自由を求めてまな板から散らばりだすでしょ。尾崎ごっこもたいがいにせえ。

ひとつデメリットがあるとするなら、洗った際にフタ内部の水切りがしづらく、ヒモが乾きにくいことでしょうか。私は念のため、表面が乾いたあともキッチンペーパーの上に立てかけてしばらく乾燥させています。ま、カビたらカビたで買い替えればいいし。執着せず気軽に使えるおねだんなのもうれしいポイントです。

 

以前は「100均で100円以外のものを買うのは負けた気がする」と無意味なこだわりを持っていましたが、実際に使ってみたり、ほかのお店で価格の相場を知ったりしたことで、むしろ他店よりリーズナブルにこのクオリティの製品が手に入ることのすごさをあらためて実感したところです。

自分の好きなものや大切なところにはためらわずお金を使えるよう、節約できるところはどんどん活用して生活を回していきたいな~と思っています。

あと、100均見て回るのふつうに楽しいです。アミューズメントパーク化している。いろいろ売ってすぎ。

先日、セリアでエヴァコラボのクリアボトルを買いました。私は初号機、恋人は弐号機。零号機があれば完璧だった(綾波推し) 

すばらしくてNICE CHOICE(アイリスオーヤマ・天板つき収納ワゴン)

引越しについてのエントリを書いてから早一ヶ月。

その後も思いつくままに洋服・漫画・CDにDVDを処分すること複数回、文字どおりタンスの肥やしに別れを告げ、かわりに必要な品を買い足すなどしながら、なんとか新居へと移りました。

持つべきものは近所のセカストとブックオフ…!

後者に至っては買取成立後、払い出した小銭を札に両替させるマンとして顔おぼえられたと思う。

すこし前に財布をミニマム化したせいで、小銭入れるとフタが留まらなくなる事案がしばしば発生するのである… その結果、小銭をATMにシューーート!する機会が増えました。(超エキサイティン!は特にしない)

 

断捨離ハイの一方で残った荷物を梱包するなか、これをまた荷ほどきするのか…とうんざりしながら「持ち物は少ないほうがいい」と肝に銘じた私でしたが、住めば住んだで新たにモノが必要となるので本当に不思議です。

引越し、それは物入り(凡庸すぎる感想)。

 

とりあえず、入居後に買ったなかで一番のヒットは、アイリスオーヤマの天板つき収納ワゴンです。 

 

洗面台まわりって作業スペースが必須なのに実際は乏しいってこと、あるあるじゃないですか?(そのまま虚空へと吸い込まれる問いかけ)

わが家ではハンドソープと歯磨き粉を置いたら「ここは満員だ…逃げることはできねーぜ」と空条承太郎ばりのクールさでコンタクトケースが洗面ボウルa.k.a蟻地獄へ突き落とされます。

コンタクト⇔眼鏡のつけ外しや化粧品の仮置きなど、朝の支度のたびに暴れ牛になったので、実家に忘れたメジャーを召喚、即行でサイズを測ってポチりました。

 

ワゴンだとイケアのロースコグなんかが有名ですが、この製品は天板がついていることとと、幅がよりスリムなことがミソだと思います。

 

わが家では洗濯機横のすき間に収納しておき、必要なときに作業台として使用しています。

身支度のときに加え、洗濯三銃士(洗剤・漂白剤・柔軟剤)のボトルをデンと出せるおかげで、洗濯機への注水がはじまってもあわてず必要量を測れるようになりました。ただ単に家事慣れしてないだけともいう。

入浴後のバスタオルや肌着も洗濯機の上に置いていましたが、無事解消。

余談ですが、洗濯機の上って広いから仮置き場になりがちだよね。乾いたタオル畳むときとかめちゃくちゃ活用してる。畳んでくれと言わんばかりの表面積。

こんなもののために生まれてきたんじゃないって月光よろしくうちのZABOONちゃんもお嘆きかもしれない。

 

閑話休題

こちらのアイテム、幅22・28・33センチとかゆいところに手が届くサイズ展開なのもニクい。

キャスターもカクカクせず、スムーズに転がるので今のところノーストレスです。

工具は不要、組み立ても7~8手順ほどと比較的かんたんな部類に入ると思います。

が、私は設計図などの読み解きスキルが壊滅的なので、同梱パーツの確認以外、手を借りたことを正直に告白します。アーメン。

ちなみに支柱部分のジョイントの組み上げがちょっと固いので、トンカチがあったほうが作業は捗ります。取説にも書いてある。

ちなみついでに、取説で唐突に登場したハンマーという文字があまりに日常になじまず、一瞬ピコピコハンマーで猛打する光景が頭をよぎったことも正直に告白します。

 

洗面所の収納はこいつのおかげで片づきつつありますが、実は洋服収納がまだ終わらず… クローゼットケースを2台追加投入したいと思っている今日このごろです。

引越し、それは物入り。(しみじみと二度目)